機関車約4分で読めます

JR貨物HD300形ハイブリッド機関車

Class HD300

HD300形ハイブリッド機関車は、日本貨物鉄道(JR貨物)が2010年(平成22年)より製造を開始した、軸配置B0-B0の入換用ハイブリッド機関車である。JR貨物の公式名称は「HD300形式ハイブリッド機関車」。

JR Freight Class HD300 hybrid diesel shunter HD300-4 at Sumidagawa Freight Terminal in Tokyo.
JR Freight Class HD300 hybrid diesel shunter HD300-4 at Sumidagawa Freight Terminal in Tokyo.(英語) · Cheng-en Cheng from Taipei City, Taiwan · CC BY-SA 2.0 · Wikimedia Commons

歴史

貨物駅構内の入換作業には国鉄から継承されたDE10形ディーゼル機関車を主として使用していたが、経年は40年以上となり老朽化が著しく進行しており、これらを置き換えるために、近年の環境問題への取り組みとして排出ガスを削減する新しいシステムを採用して開発された。「環境に優しいクリーンな機関車」をコンセプトに、DE10形と比較して有害排出ガスを30〜40%以上削減、車外騒音レベルを10dB(A特性)以上低減、エンジンの効率的運転と回生ブレーキの活用によるCO2の大幅な削減を目標として設計・開発された。ハイブリッドシステムの開発にあたっては国土交通省の鉄道技術開発費の補助を受けている。

ディーゼル発電機を動力源とする電気式ディーゼル機関車と、蓄電池(リチウムイオンバッテリー)を動力源とする蓄電池機関車の2つの要素を兼ね備えた、日本初のハイブリッド機関車であり、ディーゼル発電機からの電力と蓄電池からの電力を協調させてモーターを制御する「シリーズ・ハイブリッド」方式を採用している。搭載されたディーゼルエンジンは直接駆動力には使用されず、発電機を回転させる発電用として使用される。エンジンはカミンズ製のFDMF9Z形で、製造実績のある既存の産業用水冷4ストローク直列6気筒エンジン(出力325PS)を転用し、出力270PSで使用している。蓄電池として、量産機ではジーエス・ユアサコーポレーション製のリチウムイオンバッテリーを搭載している。

主電動機にはFMT101形永久磁石同期電動機(PMSM)4基を搭載しており、永久磁石同期電動機の採用は機関車として初めてである。鉄道車両においてVVVFインバータ制御で駆動されるモーターは誘導電動機が主流だが、永久磁石同期電動機は誘導電動機より効率が高く、小型軽量化も図れる。1時間定格出力は320kW、踏面最大出力は500kW、最大牽引力は196kN(約20tf)である。車体はセミセンターキャブタイプで、主変換機、蓄電池、運転室、発電の4つのモジュールに分割した構造とし、保守の簡略化を図るとともに、モジュールごとに独立して性能改善を行えるようにしている。エンジンが故障した場合でも、蓄電池からの電力のみで自走できる。

The Class HD300 prototype (HD300-901) hybrid switcher at Tokyo Freight Terminal. 原寸大で表示(新しいタブで開きます)
The Class HD300 prototype (HD300-901) hybrid switcher at Tokyo Freight Terminal.(英語)Rs1421 · CC BY-SA 3.0 · Wikimedia Commons

形式記号は、ハイブリッド方式の機関車であることを表す「H」を初採用し、動軸数4であることを表す「D」と組み合わせて「HD」とされた。「300」は同期電動機を表す。車体は視認性を高めるため、EF510形と同じ鮮やかな赤色のフレート・レッドで塗装され、前面の連結器周辺には警戒色の黄色と黒の斜めの縞が塗られ、Hybridのロゴが描かれている。整備重量は60tとDE10形の65tより軽量化されたが、動軸数が1軸少ないため軸重は15tとDE10形より2t重くなっている。2010年6月に東京貨物ターミナル駅で行われた試験では、DE10形と比較して燃料消費量36%、騒音22dBの低減効果が確認された。

2010年3月に試作機HD300-901が東芝府中事業所で落成し、3月25日に公開された。3月30日に東京貨物ターミナル駅へ輸送されて約6か月間の試験に供された後、高地での性能を確認するため、同年中に長野県の松本へ移された。2011年1月下旬からは札幌貨物ターミナル駅構内で、寒冷地での蓄電池の性能と粘着性能を確認する試験が行われ、その後も各地で試験走行を実施した。試作機901号機は、2011年7月11日から入換機として東京貨物ターミナル駅で運用を開始した。

2012年1月には量産型1号機となるHD300-1が東芝府中事業所で落成・甲種輸送され、2012年2月8日より東京貨物ターミナル駅構内で使用を開始した。量産機では、前面ステップが雪で埋もれないよう前面排障器の幅を拡幅し、前照灯・尾灯を一体のケースに収めたほか、入換合図の視認性向上のため運転室出入口扉の窓を拡大し、側窓も拡大するなどの改良が施された。2014年度には寒冷地仕様である500番台が登場し、2014年11月に甲種輸送された501号機を皮切りに3両(501〜503号機)が苗穂車両所に配置されて札幌貨物ターミナル駅で使用されている。500番台では、降雪による制動力や粘着力の減少を補うため台車に設けられたセラミック噴射装置が、暖地仕様の0番台の8か所に対して2倍の16か所に増強されている。

Class HD300-500 subseries locomotive HD300-501 at Kita-Fuchu, on delivery to JR Freight's Naebo Depot in Hokkaido. 原寸大で表示(新しいタブで開きます)
Class HD300-500 subseries locomotive HD300-501 at Kita-Fuchu, on delivery to JR Freight's Naebo Depot in Hokkaido.(英語)DAJF This photo was taken with Sony SLT-A77 · CC BY-SA 4.0 · Wikimedia Commons

試作機にあたる901号機は、2012年5月、鉄道友の会が毎年選定する2012年のローレル賞を受賞し、同年11月18日に東京貨物ターミナル駅で授賞式が行われた。2017年3月1日時点で29両が運用されており、2018年2月時点の在籍数は32両であった。2020年1月25日現在、35両(901、1〜34号機)が新鶴見機関区と岡山機関区に、3両(501〜503号機)が苗穂車両所に配置されている。新製費用が本線用電気機関車と変わらないほど高価で初期投資が大きいため、本形式は入換作業の密度が高い貨物駅への重点配置に留まっている。

年表

この年表は英語のみです。

  • 2010Prototype locomotive HD300-901 is unveiled on 25 March and delivered from the Toshiba factory in Fuchū, Tokyo, to Tokyo Freight Terminal on 30 March for about six months of trials. June 2010 tests at Tokyo Freight Terminal show 36% fuel savings and 22 dB noise reduction versus a Class DE10.
  • 2011After cold-weather testing at Sapporo Freight Terminal from late January, the prototype HD300-901 enters revenue service from 11 July on shunting operations at Tokyo Freight Terminal.
  • 2012The first full-production locomotive, HD300-1, delivered from the Toshiba Fuchū factory in January, enters service at Tokyo Freight Terminal from 8 February. In May the prototype HD300-901 is awarded the 2012 Laurel Prize by the Japan Railfan Club, with a presentation ceremony at Tokyo Freight Terminal on 18 November.
  • 2014The first Class HD300-500 cold-climate sub-class locomotive, HD300-501, is delivered to Naebo Depot in Hokkaido in November for use at Sapporo Freight Terminal.

出典